大学職員はやめとけ!という主張について
まずはっきりさせたいのは、私自身は現役の大学職員として、心の底から大学職員という職業を皆様にお勧めしたいと思っています。
圧倒的な休暇の多さ、比較的恵まれた給与、そして穏やかな労働環境などなど、日々その恩恵を受けています。
ただ、最近は情報発信をしている大学職員の方も増えてきたことで、ネガティブ情報も増えてきましたよね。
「大学職員はブラックだ!」
「大学職員は給料低すぎ・・・」
「大学職員の休みが多いとか言ったのは誰だ!」
もちろんいい情報ばっかりなんて怪しいですし、良くも悪くも様々な大学の実態が明らかになっていくのは良いことです。
ただ、「それって個人的な話(レアケース)じゃないか・・・?」と思うこともしばしばあるのです。
つまり、炎上覚悟で言うと、「あなたが大学職員に向いていないだけじゃないの?」と思うケースもあるわけです。
私が大学職員を褒めると、お前の大学だけだ!とか、主語を大きくするな!(=自分の大学の話を大学業界全体の話にするな!)と、よくお叱りを受けますが、正直、逆もまた然りということです。
そこで、今回は大学職員に転職したことを後悔する方が1人でも減るよう、大学職員に向いていない人=大学職員はやめとけ!な人とはどんな人なのかを考えていきたいと思います。
転職失敗?→誰にでも大学職員が適しているわけではない
まず、当たり前ですが重要なことを1つ。
前提として、どんなに素晴らしいとされている職場でも、万人に合うとは限りませんよね。
極端な例で言えば、給料至上主義の方は投資銀行や不動産営業はいい職場かもしれませんが、労働環境(労働時間やノルマの有無 等)を重視する方にとっては、これらはまず転職先の候補にはならないでしょう。
つまり、大学職員も同様で、誰がどんなに薦めようとも、自分の価値観にマッチしているかどうかをしっかりと確認することが極めて重要です。
そして、その確認においては、その職業・職場のデメリットを元に考えるといいと思います。
なぜなら、働いていく上で、メリットよりもデメリットによるインパクトの方が大きい場合が多いためです。
皆さんも心当たりがあると思うのですが、物事のいい面よりも悪い面が気になって仕方がなくなることってありませんか?
仕事で言えば、給料もいい、安定感もある。ただ、あの上司が嫌すぎる!といった場合。
側から見れば、人間関係なんてどの会社も多少は難しい面があるし、いい会社だなと思いますが、上司が嫌!という面(デメリット)のインパクトが大きいと、周りからの評価は関係なく、とにかくその職場が嫌で嫌でしょうがなくなるわけです。
このように、メリットの効果は意外と限定的で、デメリットのインパクトは絶大なので、その職業・職場のデメリットを考え、それを自分自身が許容できるのかを考えることがミスマッチを防ぐ大きなポイントの1つになるでしょう。
大学職員のデメリットとは?
では、私の考える大学職員のデメリットとは何かということですが、多くの大学に該当しそうなものとしては以下の通りです。
・閑散期、繁忙期の差が激しい
・異動による仕事の変化が大きい
・立場の異なる人とのコミュニケーションが難しい
・人間関係的に逃げ場がない(狭い職場)
順番に軽く説明しますね。
・土曜勤務や休日出勤がある
まず、大学職員は、多くの大学で土曜勤務があります。
これは土曜にも授業をやっている大学があったりする関係ですね。
大学職員は休みが多い!というイメージ(実際本当です)が先行しすぎて、まさか土曜日も出勤とは思わなかったという方がたまにいるので、注意です。
ちなみに、個人的には土曜出勤があることはメリットだと考えています。
また、大学は学校ですので、オープンキャンパスや入試をはじめ、様々なイベントを開催します。
そのため、意外と休日出勤は多いです。
もちろん配属された部署にもよるのですが、1年を通じて、一切休日出勤がないというのはあまりないかと思いますね。
大学職員は夏休みと年末年始を中心として休日数自体は多いのですが、1週間単位で見ると、「週6日勤務」があったり、人によってはハードに感じるかもしれません。
1日あたりの労働時間が減るとすれば個人的には大した問題ではないと思いますが、転職組で、これまでの週5日勤務に慣れてしまった方は、それでもいいのかよく考えてみてください。
私の周りでは、華金(死語・・?)を心の底からは楽しめなくなって辛いと言う声がありました 笑
・閑散期、繁忙期の差が激しい
これはメリットの裏返しかもしれませんが、大学職員は夏休みなどの閑散期(むしろ休み)がある一方、年度始め周辺(2月〜5月ぐらい)を中心としてどの部署も繁忙期がやってきます。
もっと業務改善をして、忙しさを平準化すればいいじゃないかと思いますよね?
それが、学校という性質上、決まったスケジュールで動いていますから、どうしても時期によって業務量に差が生じてしまうのです。(2〜4月頃に主要なイベントが詰まっているのはイメージできると思います。)
仮に自身ではうまいこと業務を回していたとしても、大学全体がバタバタするわけですから、穏やかではないですよね・・・
ほぼ確実にやってくる、自身でコントロールできない繁忙期・・・。
特に完璧主義の方なんかは、しんどく感じることも多いと思われます。
また、さすがの大学職員といえども、この時期は残業が多くなるわけですが、繁忙度合いの緩急によって、メンタルにきてしまう方が多いそうです。
意外かもしれませんが、大学職員(教員もですが)でメンタルを病んでしまう方が一定数いるんですよね・・・。
もちろん、人間関係だったり、家庭の事情だったり、原因は多岐にわたっています。
しかし、常に忙しいのがいいわけはないものの、一時的に急激な忙しさがあるというのは、精神的な負担になってしまうのかもしれません。
ちなみに、大学職員でネガティブ発言をしている方を見ると、繁忙期でしんどくなっているのではないかと心配してしまいます 笑 (閑散期にはケロッとしていることを祈ります)
・異動による仕事の変化が大きい
以下で挙げた幅広い仕事をできるかもしれないというメリットの裏返しでもありますが、大学職員は専任職員(いわゆる総合職)の場合、異動によって全く新しい業務をやらされることが多々あります。
例えば、教務系の部署で学生対応をずっとやってきた方が、明日から人事業務をやるというようなことが普通にあるのが大学職員です。
そうは言っても、どれも事務職だろうと舐めていたら、全国の高校を訪問させられたり、学生・教職員への説明(プレゼン)等、単純な事務職とは異なった業務もありますので、注意が必要です。
皆さんには苦手な仕事や絶対にやりたくない仕事はありますか?
大学職員になると、そんな仕事をやらされる可能性もありますよ。
もちろん全ての職業を把握できているわけではないですが、大学職員の仕事の幅は確かに広いので、なんでもやる!という覚悟は必要かもしれません。
「大学職員の異動は転職」とはよく言ったものですね。
・立場の異なる人とのコミュニケーションが難しい
先のメンタルを病むということに大きく関わるのですが、大学はコミュニケーション力を問われる職場だと強く思います。
事務職でコミュニケーション?と思うかもしれませんが、常にコミュニケーション力が試されていると言っても過言ではありません。
まぁ、学生、保護者、教職員をはじめ、人と関わっていく職業ですから当然といえば当然でしょうか。
ただ、事務職だと思ってここを見落とす人は結構苦しむと思いますね。
ちなみに、特に難しいと思う点は、各ステークホルダーの立場が異なっており、同じ組織にいながら、違った方向を向いているという点です。
目標・目的が一致していないので、しばしばコミュニケーションがすれ違いがちです。
また、教員と職員の間にはまだまだ意識の壁があるため、対立するケースも多いかと思います。
パワハラとまではいきませんが、コミュニケーションで悩む方が多いということは念の為お伝えしておきます。
・人間関係的に逃げ場がない(狭い職場)
デメリットの最後ですが、大学職員は比較的小規模な職場が多く、長年に渡って、同じ人たちと仕事をすることになります。
これをどう捉えるかは人によると思いますが、万が一人間関係につまずくと、それをリセットすることが難しい場合があります。
つまり、人間関係における逃げ場がないのです。
この点は、特に女性で悩む方が多い印象です。
上司との関係がうまくいかないといった場合、仮に異動できたとしても、その人との業務的な関係が断てるかというと、大学の場合、必ずしもそうはなりません。
これまで人間関係で悩んだ経験が多い方は、一般的な企業と比べても、ある意味異質な環境である可能性が高いということを認識していただきたいと思います。
・その他のデメリット(他のブログで言われていること)
なお、今回私が挙げたのは、一般的に言われている内容と少々異なっているかもしれません。
よく言われているのは、以下のような点ですね。
・給料がこれ以上上がらない
・スキルが身につかない
・仕事が面白くない(毎年同じ仕事の繰り返し)
ただ、正直、これこそ個人的な話や思い込みばっかりだな〜と思いましたね。
特に下2つはもう呆れますね。
どんな仕事だって改善の余地はあるし、本人のやる気次第でスキルは磨けるはずです。それを業界のせいにしちゃうあたり、情けないですね。
しかも、結局は大学職員を勧めているわけなので、それを差し引いてもメリットを感じているから仕事続けているんじゃないの?と思ってしまいました。
将来性の話だって、少子化だから!とか、そのレベルです。
上記のような内容ではなく、もっと働いていく上で自身にも密接に関わるのも(かつ自分ではどうにもならないこと)に着目して欲しいと思います。
もう少し出てきそうですが、長くなってしまったので、上記の主要なデメリットを考慮しつつ、いよいよ大学職員に向いていない人を考えてみましょう。
大学職員に向いていない人1:変則的な勤務がどうしても嫌な人
まず、変則的な勤務が嫌だと考える人(家庭の事情等で難しい人含む)は、大学職員に向かないと思います。
先に挙げた通り、土曜・休日出勤もありますし、繁閑の差も激しいです。
これは大学職員になったら、基本的には一生続くので、毎日一定のリズムで暮らしたいという方は避けたほうがいいかもしれません。
逆に、毎年の夏休みを心待ちにしつつ、繁忙期を「毎年やってくる嬉しくないお祭り」として実は楽しんでいるような人は大学職員に相応しいですね!
なお、変則的な勤務という点でいえば「大学職員の残業」についても触れておく必要があると思います。
大学職員の残業ですが、正直、ほとんどの部署で「ある程度の残業はある」と考えておいた方がいいと思います。
私がネット上の声と自身の認識で最もギャップを感じるのは、この残業についてです。
年間でほぼ残業時間0なんて方がネット上にはゴロゴロいますが、これは正直怪しいなと。
まず、仮に自身の仕事で残業がなかったとしても、入試等の特別業務だけで時間外勤務は発生するはずなので、その時点で嘘だろと思っています 笑
また、実際、ほぼほぼ残業をしない方も中にはいます。
しかし、周りが残業をしていても一切気にせず帰れる強いメンタルを持っているような方が大半です。
残業いい悪い議論は置いておきまして、少なくともうちの職場では異端児ですので、一般的なメンタルをお持ちの方は、繁忙期には多少の残業があると考えておいた方が安心です。
一切残業しないプランで入職した場合のギャップに苦しまないで欲しいです。
大学職員に向いていない人2:1つの仕事を極めたい人
次は、やりたい仕事が明確に決まりすぎている人や1つの仕事を極めたい、職人気質な方です。
このような方々も大学職員にはミスマッチでしょうね。
先にお伝えしたように、大学職員の異動はもはや転職です。
長期的に見た場合、どんな仕事をすることになるかわからない以上、担当業務へのこだわりが強すぎる方は大学職員向きではありません。
ただし、採用試験では自身のやりたい仕事を明確にしておく必要があるのがジレンマですね・・・。
自分のやりたい仕事を持ちつつ、どんな仕事でもやってみるか!と思うスタンスが必要だと思います。
ちなみに、近年、大学職員の専門化に関する議論がされておりまして、大学によっては専門職化という名目の元、異動頻度を減らし、各部署のベテランを育てる方向にシフトしているところもあります。
この点が気になる方は、面接の際、その大学の異動に関するスタンスを聞いてみるのもいいかもしれませんね。(異動を嫌がっているように聞こえたり、ネガティブな印象にならないよう注意!!)
大学職員に向いていない人3:人とのコミュニケーションを避けたい人
3つ目は、人とのコミュニケーションを避けて仕事をしたいと思っている方です。
特に大学職員を目指すのが「事務職だから」という方は注意ですね。
大学職員は確かに事務職です。
接客業などの方からしたら、明らかに事務職なんですが、必ずしもパソコンにかじりついて事務作業を続けているわけではないのです。
そして、関わる人が多いため、他者とのコミュニケーションを避けて通れません。
事務というイメージからかけ離れている、様々な打ち合わせへの参加、各所への説明・プレゼンテーションなど、人前に出ることも普通にあります。
よって、黙々と事務作業をしていたいから大学職員!という方は、現代の大学職員としては、不適切だと思いますね。
大学職員に向いていない人4:人間関係トラブルを抱えやすい人
4つ目はこれまでを振り返って、人間関係のトラブルを抱えやすいと感じている人ですね。
狭い範囲での人間関係に苦手意識があったり、同じ人間関係が長期に渡り続いていくことが嫌だと感じる方は、大学職員を苦痛に感じるかもしれませんね。
先に述べた通り、大学職員は異動こそあれ、キャンパスが複数あるような大学を除いて、人間関係があまりリセットされません。
現在、人間関係を理由に大学職員への転職を考えている方は、さらに問題を抱える可能性があることも考慮する必要があります。
良くも悪くも大学職員の離職率は低いですから、自身がどんなに嫌いでも、その人はなかなかいなくなってくれませんよ 笑
そうなると、もし逃げたいと感じたら、自分が退職するしかなくなってしまいます。
大学職員は、狭い職場ゆえ、人間関係に悩む人が多い。これは重要ポイントです。
職場は職場と割り切って表面上の交流を徹底できる人や、アットホームな環境を楽しめるような人がいいですね。
あとは、大規模な大学になれば、多少は逃げ場ができるでしょう。(その分、キャンパスを超えた異動があったりするかもしれませんが・・・)
大学職員に向いていない人5:大学職員に夢を見すぎている人
最後に、最近、こういったミスマッチが増えてきたと個人的に思っているタイプを挙げたいと思います。
それは、大学職員に夢をみすぎて、ギャップに苦しむタイプです。
最近、情報が増えてきたこともあって、大学職員のイメージが美化されすぎているところがあります。(これは私たちにも責任の一端があります。)
そのイメージが膨らみすぎて、「大学職員になったら、勝ち組だ!」とか、「大学職員になったら、即年収1000万」と思っている転職者が本当にいるそうです。
特にこの年収情報が問題でして、一般的な転職者で即年収1000万を超える方なんて、滅多にいません。
あくまでコツコツ勤務を続けていれば、年収1000万を目指せるということです。
大きな成果をあげなくても、勤続年数だけで多くの人にチャンスがあるというのは贅沢な話ではありますが、過度な期待は禁物です。(大企業出身者にありがちです)
ネットに掲載されている年収情報は、ある程度目安にはなるものの、転職者がその通りにもらえるかというと疑問があります。(同年齢でも、現職者と転職者で給与に差をつけるのはよくある話です。)
また、上記のような方はブランド志向な人も多い印象があります。
ですので、自分から入職したにもかかわらず、その大学のブランド(だいたい偏差値のイメージを引きずってますね)が気になって、勝手にモチベーションを下げています。
じゃあ、有名大学ならブランド的にも問題ないのかというと、次は、教員と職員の比較が始まってしまいます。
大学はいいけど、教員が偉そうにしていて、嫌だ・・・となるわけです。
さらに、国立大学の場合、文科省からの出向者なんかもいるので、なおさら劣等感を抱くことがあるとかないとか・・・
このように、大学職員に夢を見すぎて、変なプライドを持ってしまう人は大学職員に向いていません。
大学職員とは、「外面にこだわらず、実質を見て、コスパの良い職業がいい!と考える方が選ぶべき職業」です。
ちなみに、ネット情報でいう大学職員は主に「私大職員」なので、国立大学に入職される方は特に注意です。(特に給与は公務員ベースでも低めであることが多いです。)
余談ですが、くれぐれも、職業選びのポイントに「モテる職業」が入っているような方は、やめておきましょう 笑
なお、冒頭の「大学職員はブラックだ!」とか言う方も、実はこのタイプなんじゃないかと思いました。
実際、そんなに悪い条件ではないかもしれないのに、「(思っていたより)給料が安い!」、「(思っていたより)激務だ!」ということになっている可能性があります。
我々も可能な限りリアルな情報を届けたいと思いますが、イメージだけでなく、しっかりと現実を見て転職して欲しいと思います。
×大学職員はやめとけ⇒○本当に自分と合っているかよく考えよう!
今回は、「大学職員に向いていない人」について考えてみました。
大学職員を勧める声がある一方、大学職員はやめとけ!と言う声もありますよね。
しかし、そこから読み取るべき本当の意義とは、「大学職員が自分に合っているかをよく考えてみましょう!」と言うことだと捉えています。
当然ながら、今回挙げた内容が全てではないのですが、大学職員への転職を考えている皆さんには、是非自分は大学職員を本当に目指すべきなのかを今一度考えて欲しいと思っています。
皆さんの中には、労働条件面のみを見て大学職員を目指す方もいますし、大学に熱い思いを持って挑んでいる方もいるでしょう。
しかし、どちらであっても、その面だけを見ていては、ミスマッチが起こる可能性は高くなってしまいます。
必ずさまざまな観点から大学職員という職業を眺めて、自身のキャリアを考えて欲しいと思います。
ここでしっかりと考えた上で、「大学職員になりたい!」と思った方は、突き進むのみです。
また、現職の方も、自身が大学職員を続けていくべきなのか、なぜ続けているのか、今一度考えてみてはいかがでしょうか。
大学職員を勧めまくっている私が、大学を手放しに素晴らしい!と言うべきではないのと同様に、大学職員を日々批判的に見ている方も、逆に大学職員の良さを今一度見つめ直して、日々のモチベーションアップに役立てて欲しいと思います。